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生産財の購買プロセスTiiiCA

消費者の心理プロセスで有名な「AIDMAの法則」だが生産財にはしっくりきません。
そこで生産財業界向けに購買プロセスモデルTiiiCA(ティーカ)を提唱します。



AIDMAの法則」は生産財には合わない

消費者の心理を表した「AIDMAの法則」は広く知られていますが、生産財(企業向けの製品)にはあまり適していません。この法則は、購買が個人の感情や欲求に基づいて進むことを前提にしていますが、生産財の購入は複数の関係者が関与し、経営や部署ごとの目標達成が大きな動機となります。また、生産財の購入にはネットだけで完結することは少なく、共同開発や提携といった現実的な側面が重要です。このような点で、AIDMAや「AISAS」も、生産財の購買プロセスにそのまま当てはめるのは難しいのです。


生産財の購入の特徴

一般消費財の購入と生産財の購入には共通点もありますが、大きな違いもあります。生産財は企業の成長や維持に必要な製品やサービスを選ぶため、慎重かつ組織的に検討されます。また、生産財の取引には大きなリスクが伴い、契約が長期間続くことが多いため、一般消費財の購買理論をそのまま当てはめることは無理があると言えます。


生産財の購買プロセスTiiiCA

「TiiiCA」は、生産財購入のプロセスを示す新しいモデルです。企業が事業目標を達成するために、最適な製品やサービスを選ぶ過程を説明します。このプロセスには、次の段階があります。

Target:目標

目標達成に向けて、課題を設定し、仮説を立てます。企業や部署の目標に沿って、プロセス改善や製品開発を進めていきます。このとき、目標設定は数値で理論的に行われ、QCD(品質、コスト、納期)を基にします。


Interest:関心

目標達成に必要な情報に関心を持ち、各部署が異なる視点でテーマを設定します。部署間で意見が対立することもあり、同じ部署内でも役職や業務内容によって関心が異なることがあります。


Investigate:調査

関心を持ったテーマや製品・技術の情報を収集し、調査します。業界新聞や展示会、取引先からの情報などを使い、調査は慎重に、かつ並行して複数の部署や関係者によって行われます。この段階では、問い合わせをしても購入の意思を見せず、単なる情報収集に見えることが多いです。


Inquiry:引合

課題解決の方法が見つかれば、引合いを出します。この段階では、必要なQCDが明確になり、条件交渉や仕様調整を行い、比較検討のための情報を集めます。


Consensus:コンセンサス

各社からの提案が揃った段階で、購買チームが慎重に検討します。提案のメリット・デメリットを評価し、社内全体の目標や現状認識を共有した上で、関連部署の意見調整を行います。


Agreement:契約

最終的に契約企業が決まったら、アフターサービスなどの条件をすり合わせ、契約を締結します。特に半導体や重要な素材などの場合、リスク回避のため、複数の企業と契約することもあります。

まとめ

このように、生産財の購入プロセスは消費財とは異なる特徴を持っており、そのための新しいモデル「TiiiCA」を提唱します。


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