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本当にできていますか?営業現場でのヒアリング

 おはようございます。営業ならヒアリングが大事って耳にタコができるほど聞いていると思います。しかし、ヒアリングも「知っている」けど「できていない」典型的なスキルの一つ。自戒を込めて一度見直してみたいと思います。



営業の成果はヒアリング力で決まる

私はかつて、提案営業を1年間みっちり学ぶ機会がありました。理論を学ぶだけでなく、実際に営業活動を行い、提案書を作成して商談をまとめるところまで経験する実践的な内容でした。

参加者は、経営コンサルタント、ベテラン営業マン、独立を目指す会社員、大手企業の研修担当者など様々。彼らと共に、提案営業のスキルと、それを教えるためのノウハウを学びました。この研修は、私の営業スタイルに大きな影響を与えました。その中で最も印象に残っているのは、「提案営業の前提には、お客様から信頼される高いコミュニケーション能力がある」ということです。

研修の最後には、実際の営業活動を通じて提案書を作成し、発表する機会がありました。ある提案書は、お客様の悩みや願望がまるで見えるかのように描かれており、非常に説得力がありました。一方、どこかで見たような課題や分析ばかりのものもあり、ヒアリングの深さの違いが如実に現れていたのです。

論理的でメリットを強調していても、ヒアリングが浅ければ、それはただの売り込みに過ぎません。逆に、お客様の本音を丁寧に引き出した提案書は、「ここまで理解してくれるのか」と感動さえ与えるものになります。提案営業とは、お客様の考えを整理し直す作業そのものなのだと、私は実感しました。


ヒアリングの前に関係作り

ヒアリングに入る前には、まず信頼関係を築くことがとても大切です。いきなり本題に入ってしまうと、相手も警戒心を持ったまま表面的な話に終わってしまいがちです。まずは仕事とは直接関係のない話題や、相手の趣味・最近の出来事などをきっかけに、自然な会話を交わして心の距離を縮めましょう。共通点を見つけたり、相手の話に共感したりすることで、「この人には本音を話しても大丈夫だ」と感じてもらえる土台が生まれます。

また、会話の中で相手が心を開いているかどうか、表情や声のトーン、言葉の選び方などを慎重に観察することも重要です。リラックスした雰囲気を作りつつ、相手の反応に敏感であることが、信頼関係の構築と質の高いヒアリングの鍵となります。


営業のカギは「顧客理解」

製造業の営業では、自社製品のスペックや価格だけでは不十分です。例えば「5%コストダウンできます」「10%省スペース化できます」「性能が20%アップしました」といったアピールでは、相手のニーズに響きません。

営業にとって大切なのは、「この技術がどう使われ、どのように貢献できるのか」を伝えること。そのためには、顧客を深く理解しておく必要があります。営業で成果を出すには、「顧客理解 × 自社技術の引き出し」のかけ算がカギ。他社との比較よりも、お客様のニーズを深掘りすることが差別化につながります。


色眼鏡を外し、先入観を持たずにヒアリング

顧客を理解するにはまずはヒアリング。自分の仮説や商売の都合を脇に置き、色眼鏡を外すように心がけています。相手の話に素直に耳を傾け、必要に応じて気づいたことを伝える。忘れてはならないのは最終的にどこに発注するかはクライアントが決めるということ。

ヒアリングでは、徹底した事前準備を行った上で、それをいったん脇に置いて、先入観なしで聞くことが大切です。事前情報がなければ、初歩的な質問ばかりになってしまい、クライアントは話しにくくなります。だからこそ、下調べは入念に行い、その上で白紙の気持ちで臨むのです。


傾聴のつもりが尋問になっていないか?

「傾聴が大切」とはよく言われますが、実際には尋問のようなヒアリングになってしまっていることも多いのです。話を聞くのではなく、セールスのきっかけを探しているように感じる・・・。

ヒアリングでは、

  • コーチングなら傾聴し見守る
  • コンサルティングなら傾聴しアドバイスする
  • 営業なら傾聴し提案する

この順番を守ることで、相手の現状を正しく把握することができます。


調べられることは自分で調べておくのがマナー

ヒアリング技術に関する書籍やテクニックは多数ありますが、私が最も効果的だと感じたのは「事前準備」です。相手の会社や市場について徹底的に調べること。今でも1時間の面談のためにその何倍も時間をかけて下調べを行うことがあります。そうした積み重ねが信頼につながるのです。

営業において、調べられることを自分で調べておくのはマナーです。調べずに聞くのは、相手に失礼です。下調べをすることで、限られた面談時間をより有効に使うことができ、相手からも信頼を得ることができます。

良質な下調べが、良質な質問を生む

市場環境や企業規模、競合ポジション、経営者の年齢など、公開情報からある程度の背景が読み取れます。そうした下調べは、ヒアリングの効率と質を高めてくれます。調べれば調べるほど、「なぜ?」「どうして?」という良質な疑問が浮かび、それが良質な質問へとつながるのです。

事前準備とヒアリングが営業成果を大きく左右します。特に時間の確保が肝心。準備不足だと、自分が話しがちになり、売り込み一辺倒になってしまいます。下調べが十分であれば、相手に寄り添った質問ができ、より深いヒアリングが可能になります。


まとめ 

営業で成果を出すためには、徹底した事前準備と先入観を排除したヒアリング。この2つの積み重ねこそが、クライアントに役立つ提案を生み出す源泉になるのです。






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