選び選ばれるのがBtoB営業の本質
世の中が大きく動く時、挑戦する企業が増えます。製造業においても、「新たな一手を打ちたい」という前向きな相談が増えるのはそんなタイミング。ところが実際には、期待されていた製品が売れず、困っている。そんな中小製造業が少なくありません。
製造現場では工程の見直しや仕入れコスト削減など、必死の努力が続いています。しかし、“売るための活動”となると手つかずのケースが目立ちます。販促施策といえば過去の展示会のチラシのみ。Webサイトにその製品の情報が少しあるのみという状況では、いかに良い製品でも売れるわけがありません。
「販売は代理店に任せているから」という理由で営業を放棄する企業もあります。でも、それでは依存体質から抜け出せません。自分たちで市場にアプローチし、仕事を受注する力を持たなければ、安定した売上は得られないのです。
だから私は、依頼をいただく際にも「本気で取り組めるかどうか」を大切にしています。営業を他人任せにして、ゆるい気持ちで改善を望まれるなら、きっぱりお断りしたい。それが、結果として双方にとって誠実な姿勢だと信じています。
クライアントは選ぶもの
BtoB営業の本質は、「選び、選ばれること」にあります。どんなに製品の性能が良くても、誰に売るか、どうやって貢献するのか?によって結果は大きく変わります。こちらから真剣に相手を選ぶからこそ、本気で選ばれるのです。
「営業なんて得意じゃない」と感じている経営者も多いでしょう。でも、それは悪いことではありません。大切なのは、苦手でもやり抜こうとする意思を持ち続けること。営業を好きになれとは言いません。でも、“本気で製品を届けたい” “役に立ちたい”という想いを持ち、自分の手で売る環境を整える姿勢が必要です。
その想いがあれば、たとえ相手が厳しい判断を下しても、営業活動は次につながります。実際、成長させてくれるのは、シビアな目線を持つ顧客だったりするものです。
レポートは行動を起こすための道具
私が初回提案の際に作るレポートも、その意識で取り組んでいます。単なる資料ではありません。「この企業は本気かどうか」「何を打ち手とするべきか」「行動に移すだけの材料があるか」を確認するための道具です。
仮説を立て、ヒアリングを重ね、柔軟に修正しながらレポートを仕上げていきます。しかし、推敲ばかりに時間をかけるわけにはいきません。限られた時間で、課題を的確に捉え、現実的な第一歩を示すことが大切。つまり、クライアントとともにPDCAの“P(計画)”をつくるための小さなPDCAを実行しているのです。
ここで必要なのはスピード。市場は待ってくれません。だからこそ、煮え切らない反応をされたらスパッと見切ることもあります。期限を決めて動けないなら、現場は前に進めないからです。
ホームページの活用は不可欠
こうした主体的な営業の第一歩として、ホームページを有効に活用することも不可欠です。にもかかわらず、製品情報が掲載されていない、更新が止まっている、問い合わせ導線が弱い…こうした「機会損失の温床」になっている企業がまだまだ多いのです。
ホームページは、顧客との接点を持つ最前線。営業担当が訪問できないときでも、製品の強みを語り続けてくれる存在です。言い換えれば、“営業の道具”です。売る覚悟を持つなら、この道具を磨き、活用しない手はありません。
実際にホームページから問い合わせがあっても、自社の営業体制が整っていなければ、せっかくのチャンスを逃してしまいます。受注の入り口にこそ、情報をきちんと整え、自信を持って発信すべきです。
ゆるい営業では信頼は得られない
中小製造業がこれからも安定して生き残るには、“仕事を待つ”姿勢から、“仕事を創る”姿勢へ転換することが求められます。だから私は、ぬるい商談、相手任せの商談、値切りばかりの取引にはNOと言い続けたい。
理不尽な要望にはきっぱり断る。それができるのは、自社に“選ぶ力”があるからです。もちろん、そのためには日々の鍛錬や改善が不可欠。変化し続けることで、お客様に選ばれ続ける会社になれるのです。