顧客獲得単価が有効に機能しない生産財 | 製造業のWebマーケティング | 宮本 栄治
2013年10月15日火曜日

顧客獲得単価が有効に機能しない生産財

Webマーケティングはターゲティングから始まります。そしてターゲットユーザーに何を伝えるのか?どう行動して欲しいのか?掘り下げ考えます。「ターゲット」「コンテンツ」「目標」この3つがしっかり決まらないと軸がブレて一貫性のある施策が打てません。そして目標を達成するためにどのくらい予算が使えるか?を考えます。一般的にはCPA(顧客獲得単価)が分かれば打ち手が採算に合うか判断できます。しかし生産財の場合、顧客獲得単価がうまく機能しないことが多いのです。

顧客獲得単価が有効に機能しない生産財

Webサイトだけで取引が完結しない生産財

生産財取引はWebサイトだけで決まることはありません(通販サイトは除き)。だからお問合せを1件頂くためにいくらまでなら使えるか?メールマガジンの読者1名増やすためにいくら使えるか?そしてそこからどのくらいの確率で商談が成約するかを把握しなくてはなりません。Webサイトのコンバージョンからの商談成約率、購入単価、利益率を明確に答えることができればWeb関連の予算作成と運用はシンプルになります。コンバージョン1件当たりの価値(利益)を把握することの大切さがWebマーケティングの書籍などでもよく語られます。生産財では取引がWebサイトで完結しないので効果測定が複雑になりがちです。また複数のキーマンが組織的に購入に絡むことも取引の決定要因を分かりにくくさせます。

購入金額も利益率も案件ごとに大きく違う生産財

生産財は同じ製品であっても、商談相手や取引量、市場の将来性などの条件によって案件ごとに購入金額も利益率もそして取引の継続性も大きく変わります。さらにカスタム対応も多く案件ごとの価値が大きく異なります。場合によっては利益が出なくとも経営判断で受注獲得に踏み切り、技術獲得や長期的な利益以外のメリットを優先することもあります。その反面、利益が出る案件でも既存顧客の仕事を優先し契約を見送ることだってあります。契約1件当たりの価値が違い過ぎてCPAを決めても使いづらいのです。

顧客数が少なく商談成約まで時間がかかる生産財

生産財は一般消費財と違い顧客数が少なく特定の顧客との長期取引の割合も高いことが特徴です。そのため、顧客獲得単価を計算できる回数が少なく、様々なマーケティング手法の費用対効果を安定的に図ることが難しくなります。 たとえば、Webサイトからの問合せで10万円でサンプル購入したお客様が、1年以上社内でテストを繰り返した後、商社から毎月100万円発注するようなことも起こるのです。契約までのプロセスはパターン化が難しく、商談件数自体も多くないのでCPAを定義することも難しくなります。実際にあった話ですが、リスティングから問合せになった案件が2年後に1,000万円を超す大型商談につながり成果が可視化できた例もあります。その企業ではWebサイトからの問い合わせは年に数回しかありません。あまりにも問合せの数が少なく契約に時間がかかるので単年度での効果測定ができないのです。

生産財では個人情報獲得コストの方が実践的

今までの経験でいうと生産財でWebマーケティングを進める場合、顧客獲得単価は理論としては正しくとも、実践を考えると使い勝手が悪いと感じてます。現場感覚では「問合せ1件にいくらまでなら払えるか?」というふうに個人情報1件当たりいくらまでならペイするか?雑誌や新聞広告や展示会での名刺獲得コストと比較して判断するほうが実践的です。そしてWebサイトのゴール設定も問合せのみにせず、資料請求やCADデータダウンロードなど複数用意して効果測定するための母数を増やすことが大切です。

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