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生産財メーカーの営業戦略も時代とともに変わる

おはようございます。
昨日は本当に調子よく多くの仕事を短時間で仕上げることができました。思った通りに進むととても気持ちいいですね。今日は珍しく書くネタを決めています。生産財メーカーの営業戦略について思うところをまとめようと思います。

生産財メーカーの営業戦略も時代とともに変わる


はじめに

時代が変わればやり方も変わります。それは営業戦略も同じこと。生産財メーカーも時代に合わせ営業戦略を変え続ける必要があるのです。いつまでも昔を懐かしんだり成功体験にこだわっても仕方ありません。そして時代が変わっても変わらないものもあります。営業戦略は「誰に」「何を」「どうやって」販売するのか?それらを状況に合わせて最適化することです。状況は常に変化している。それが前提です。

営業戦略の第一歩はターゲティング

営業戦略を考える第一歩は誰をターゲットにするかです。なぜなら、ほとんどの営業現場では何を売らなければならないかはすでに決まっているからです。どうやって販売するのか?いかに選ばれるか?そういうことに気を取られがちですがそれだけではうまくいきません。売り方ばかりを考えるのは50点。その前に誰に売るのかを決めることが先決です。

その市場で食べていけるのか?

ターゲットを決める一番のポイント、それはどのくらい儲ければ食っていけるのか?ということです。それまでの投資額、人件費、材料費、固定費を回収するのに必要な利益をはっきりさせることです。そして必要な利益を確保できる市場がどこにあるのか?採算を常に頭に入れなければなりません。露骨に言うと何人食べさせなくてはならないのか?それによって大きくターゲットは変わります。

競合の存在を忘れない

営業戦略に不可欠な要素「顧客(市場)」「自社」そして「競合」。ターゲットを決めるうえで競合の存在を忘れてはなりません。成長市場や大手企業は魅力的ですが、当然同じことを考え営業するライバルも多いものです。そしてどの市場にも競争相手は存在します。自社と市場だけを見ていても営業戦略になりません。競争の激しさ、競争相手のレベルもチェックしてターゲットを選んでいきます。

顧客を選ぶという視点

生産財取引の肝は”真剣に選び、選ばれる”こと。真剣に選ぶことが先なのです。そして選んでいただくために最善を尽くす。選ぶことが大切なのです。顧客を選ぶ定石を理解することがターゲティングの第一歩です。顧客を選ぶことを妥協すればその分だけ利幅が薄く成長からほど遠く、じり貧になるリスクがあります。

市場シェアや市場規模で選ぶ

同じ業界に売り込むにしてもトップメーカーと取引するのが好まれがちです。確かに大口取引でトップ企業と取引できれば信用力も増し、販売数量が増えれば仕入れも有利になることも考えられます。”数は力なり”という考えです。しかし、トップ企業と付き合うことが絶対的な正解ではありません。トップ企業は力が強い分厳しい条件交渉や競合との競争にさらされることが予想されます。特定の取引先に依存する体質はとても不安定なものであり大手企業と付き合う上でのメリット・デメリットをしっかり検討する必要があります。

利益率で選ぶ

シェア重視の考えの対極にあるのが利益率重視の考えです。数量を追わず利益率を第一にターゲットを選ぶ戦略です。あえて小口専門、特急専門で販売数量は少なくとも高い利益率で勝負するスタイルです。また価格交渉力の強い大企業をターゲットから外すという戦略も実践ではよく見られます。中小零細企業を中心にターゲティングする営業戦略も有効な手法の一つです。また、都市部でなく競争の緩やかな遠隔地をターゲットにする方法もポピュラーな手法です。

開発テーマから選ぶ

技術力で勝負する企業なら開発テーマでターゲティングするのも有効な手法です。取引による直接的な利益だけでなく、その仕事から得られる新しい知見を重視する考えです。失敗したら大きなリスクを負う案件でもあえて自社の技術力向上のためにチャレンジする、そういう戦略もアリです。保守的になったトップシェア企業よりも常にチャレンジングな業界2位の企業と難しいテーマに挑戦し飛躍の手がかりをつかむ考えも魅力的です。

将来性で選ぶ

また市場の将来性や企業の将来性に期待してターゲティングする選択もよく見られます。大手企業がベンチャー企業を支援するのが典型例。また製品のライフサイクルで導入期にいち早く参入する考えも同様です。しかし、成長市場ばかり狙うのが営業戦略ではありません。あえて強い競争相手の少なくなった成熟市場や衰退市場を狙う戦略も実際にはよく見かけます。競争相手のいなくなった市場で独占的に市場を占有し高い利益率を誇る企業は存在します。

顧客選別の切り口

生産財では自社に合った顧客を選ぶオーソドックスな切り口があります。それは取引の継続性と顧客数です。高嶋克義氏の書籍「「生産財の取引戦略」で解説している切り口です。

取引の継続性

自社のスタイルに合った発注頻度の顧客をターゲットにする考えです。スポットオーダーかリピートオーダーかで顧客を切り分ける考えです。一品物や特殊仕様の受注生産などが得意の企業ならばスポット取引中心になりますし、原材料や消耗品ならばリピート商売ということになります。自社に馴染んだ取引形態はどちらか意識して営業戦略の参考にします。

顧客数

対象となるユーザーが不特定多数で全国、世界に広がるのか?それとも半導体メーカーなどごく少数の企業に限られるのか?顧客数によって流通戦略も変わりますし営業スタイルも変わります。自社が顧客密着型のビジネスが得意か?それとも広く市場に多くの商品を販売するのが得意かによって取るべき戦略はおのずと変わります。

自社の資産を生かす

顧客を選ぶという視点に加え、これまでの経験、実績を生かすをいう視点も忘れてはなりません。多くの生産財メーカーはプロの厳しい目に鍛えられる10年以上存続していた企業が多くあります。気が付いていなくても確実に自社の良さはあるものです。これまでの資産を有効に生かす営業戦略はリスクの少なく現実的な方法です。

深耕開拓

既存顧客に深く入り込む営業です。これまでの取引の信用力を最大限に生かしさらに太く強いパイプを作ります。深い関係性を手掛かりに既存顧客に新しい提案を行ったり、他部署への横展開を行います。新規企業開拓ほど時間と労力がかからずリスクの少ない手法です。しかし、特定の取引先に頼りすぎると他社に命運を握られることにもなりかねず、知らぬ間にどんなことでもNoといえない状況に陥ることにもなりかねずバランス感覚が必要になります。

既存商品の横展開

実績のある自社製品を新しい市場に販売することも比較的リスクの少ない営業手法です。実績があり売りなれた商品に新しく用途開発を行います。特定業界に売り上げの大半を依存するとその業界が衰退するリスクを避けられません。既存商品を新規業界に案内し新たな顧客を開拓するのもリスクの少ない営業方法です。

まとめ

生産財であってもそうでなくても市場環境は常に変わります。それにあわせ顧客も変わればライバルも変わります。状況に合わせ常に進化させる必要があるのです。これが絶対の戦略!そう思った時点で衰退がはじまります。営業戦略も常に変わっていくもの。状況に合わせ最適化し続けるものです。

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